これまでこのブログでは、製造業での経験、AI活用、50代からの働き方の再設計について書いてきました。
長く会社で働いていると、自分の経験は会社の中でしか役に立たないように感じることがあります。
総務、安全、現場改善、設備管理、人との調整。
会社では当たり前のように行っていたことも、外に出てみると、意外な場所で誰かの役に立つことがあります。
私にとって、その一つがスズメバチ駆除でした。
私はスズメバチ駆除に関するセミナーを受け、必要な知識や道具をそろえたうえで、地域の方や管理業者から相談を受けてきました。
これまでに見積もりを行ったのは8件。そのうち6件は実際に駆除を担当し、2件は見積もり後に依頼には至りませんでした。
もちろん、私は長年この仕事だけを専門にしている駆除業者ではありません。
だからこそ、無理をしないこと、現場を軽く見ないこと、安全に終えられる条件が整っているかを見極めることを大切にしてきました。
今回は、実際に経験した現場を通して感じた、地域の困りごとを引き受ける仕事の現実について書いてみます。
※この記事は、蜂の巣駆除を自分で行うための手順を解説するものではありません。蜂の種類が分からない場合、巣が大きい場合、高所・道路沿い・屋根裏・床下など危険な場所にある場合は、無理に近づかず、自治体窓口や専門業者へ相談してください。
蜂の巣駆除は、巣の大きさだけでは決まらない
蜂の巣駆除というと、「巣が大きいから高い」「小さいから安い」と思われるかもしれません。
しかし、実際に見積もりをすると、巣の大きさだけでは判断できないことが多くあります。
高い場所にあるのか。
道路沿いなのか。
人が多く集まる場所なのか。
車が近くまで入れるのか。
何人で作業する必要があるのか。
夏場に水分や休憩を確保できるのか。
同じような大きさの巣であっても、現場の条件が違えば、必要な準備も安全対策も変わります。
料金表があっても、現場を確認してから金額を出すことが多いのは、そのためです。
私自身、現場を経験する中で、「蜂を駆除する作業」だけではなく、その前後にある安全確保や周囲への配慮まで含めて仕事になるのだと感じました。
道路上の案内標識。駆除より先に必要だった安全確保
特に印象に残っているのが、道路上の案内標識にできたスズメバチの巣です。
巣の大きさは約30cm。高さは5m以上あり、はしごを使わなければ届かない場所でした。
依頼は、道路を管理する業者から受けました。
この現場では、巣そのものよりも、道路上でどう安全に作業するかが大きな課題でした。
道路を通る車。
歩行者。
高所ではしごを使う作業者。
巣から飛び出す可能性がある蜂。
どれか一つでも対応を誤れば、作業者だけでなく、周囲を通る人にも影響が及ぶ可能性があります。
そのため、ガードマンを2人配置してもらい、片側交互通行にして対応しました。
蜂の巣を取る作業だけを見れば、短時間の仕事に見えるかもしれません。
しかし実際には、交通誘導、作業場所の確保、高所作業の安全確認、周囲への注意喚起まで必要になります。
この経験から、料金とは単に巣を取るための費用ではなく、安全に作業を終えるために必要な全体の費用なのだと感じました。
祭り前の神社。緊急性があっても急ぎすぎない
もう一つ印象に残っているのが、神社のお社の軒下にできたスズメバチの巣です。
巣は20cm以上あり、翌日には祭りを控えていました。
依頼は、神社の役員の方からでした。
祭りの日には、地域の人、子ども、高齢の方、役員の方など、多くの人が集まります。
もし巣を放置すれば、準備中や当日に誰かが刺される可能性があります。
そのため、早めに安全を確保する必要がありました。
ただし、この現場には別の難しさもありました。
お社は階段を上がった先にあり、車では近くまで行けない場所だったのです。
必要な道具や装備を持ち、階段を上がって現場へ向かう必要があります。
夏場だったこともあり、私は飲み物を車に置いたまま上がってしまいました。
作業中に水分を取れず、あわや熱中症になりかけたことを覚えています。
蜂の巣駆除というと、蜂に刺されないための防護が最も重要だと思われます。
もちろん、それは欠かせません。
ただ実際の現場では、暑さ、移動距離、階段、足場、道具の運搬、休憩できる場所があるかどうかも、安全性に大きく関わります。
この経験から、仕事では「作業そのもの」だけでなく、その作業を安全に続けられる環境があるかまで考える必要があると学びました。
普段行かない家の裏側ほど、危険に気づきにくい
3件目は、民家の北側の軒下にできた、直径20cmほどのスズメバチの巣でした。
依頼をくださったのは、その家の奥さんです。
巣があったのは家の裏側で、普段はほとんど行かない場所だったそうです。
何かの用事で家の周りを回ったときに、初めて巣に気づかれました。
玄関まわりや庭先は、毎日目に入ります。
草が伸びていれば気づきますし、何かが壊れていれば確認しやすい場所です。
一方で、北側の軒下、物置の裏、庭木の中、使っていない建物の周辺などは、普段は見ない場所です。
気づいたときには、巣が大きくなっていることがあります。
蜂の巣対策というと、駆除の方法に意識が向きがちです。
でも実際には、早く見つけることの方が大切だと感じます。
庭の草刈りや掃除のついでに家の周りを一周する。
使っていない物置や建物の周辺を確認する。
軒下や庭木の奥をときどき見る。
こうした小さな習慣が、危険が大きくなる前に気づくきっかけになるのだと思います。
見積もりは、金額を伝えるだけの場ではない
見積もりを8件行い、そのうち2件は依頼には至りませんでした。
金額が理由だったのか。
他の業者を選ばれたのか。
タイミングが合わなかったのか。
ご家族や管理者の中で判断が変わったのか。
すべてを知ることはできません。
ただ、その経験から学んだのは、見積もりは単に金額を伝える場ではないということです。
依頼者が本当に知りたいのは、「いくらか」だけではありません。
なぜその金額になるのか。
どこに危険があるのか。
何人で対応する必要があるのか。
追加費用が出る可能性はあるのか。
駆除後にどのような確認が必要なのか。
こうした説明があることで、依頼者は納得して判断しやすくなります。
依頼する側も、金額に疑問があれば、遠慮せずに作業内容を聞き、必要に応じて相見積もりや価格交渉をしてよいと思います。
危険を伴う作業なので、極端に安い価格だけを求めることはおすすめできません。
ただし、内容が分からないまま高額な費用を受け入れる必要もありません。
作業内容と金額に納得したうえで依頼することが、お互いにとって大切です。
経験が少ないからこそ、無理をしない
私は知識や道具を持っていますが、経験が十分に多いとは思っていません。
だからこそ、現場で迷ったときは、
「できるかどうか」ではなく、
「安全に終えられる条件がそろっているか」
で考えるようにしています。
高所で危険が大きい。
道路上で交通誘導が必要になる。
屋根裏や床下など、閉鎖された場所にある。
周囲に子どもやペット、人通りが多い。
自分の装備や経験だけでは判断しきれない。
こうした場合には、無理に引き受けないことが大切です。
仕事を受けることよりも、事故を起こさないことの方が大事です。
これはスズメバチ駆除に限らず、草刈り、空き家管理、高所作業、庭木の伐採など、地域の困りごとを引き受ける仕事すべてに共通することだと思います。
会社の外にも、自分の経験が役立つ場所がある
会社で身につけた経験は、必ずしもその会社の中だけでしか使えないものではありません。
安全を考える力。
現場の条件を確認する力。
リスクを見落とさない力。
人に説明し、納得してもらう力。
無理な仕事を断る判断力。
こうした力は、地域の小さな困りごとに向き合うときにも役に立ちます。
スズメバチ駆除の経験は、私にとって大きな仕事ではありません。
それでも、誰かが困っているときに、自分の知識や行動が少しでも安心につながることがある。
会社の外に出てみると、そんな場面があることを知りました。
50代からの働き方を考えるとき、特別な資格や大きな事業だけが答えではないのかもしれません。
これまでに身につけた経験を整理し、無理のない範囲で、地域の誰かの役に立てることを探していく。
そんな働き方も、一つの選択肢になると感じています。
まとめ
スズメバチ駆除の現場では、巣の大きさだけでは判断できないことが多くあります。
高所かどうか。
道路沿いかどうか。
人が多く集まる場所か。
車が近くまで入れるか。
暑さや移動の負担に耐えられるか。
安全に作業を終えられる環境があるか。
仕事の価値は、作業そのものだけではなく、安全に終えるための準備や判断にもあります。
そして、会社の外にも、これまでの経験が役に立つ場所はあります。
私自身も、これからは会社の中だけではなく、地域や暮らしの中で役立てることを少しずつ探していきたいと思います。
実際に対応した3つの現場と、見積もりで確認したい項目、料金が変わる条件については、noteに詳しくまとめました。
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