低圧太陽光発電所を所有していると、一度は次のように考えるのではなでしょうか。
「今売ったら、いくらになるのだろう」
「FIT期間が残っているうちに売った方がよいのか」
「野立て太陽光の規制が厳しくなっているので、中古発電所の価値は上がっているのか」
私も低圧太陽光発電所を2基所有しています。
今後の資産運用を考えるため、2021年に稼働を開始した2基目の発電所について、売却査定を依頼しました。
その結果、提示された査定額は、驚きの1,800万円でした。
この発電所の建設費用は約1,720万円です。
稼働開始から数年が経過しているにもかかわらず、査定額は建設費用を約80万円上回りました。
さらに、査定時点のローン残債は約840万円です。
単純計算では、査定額からローン残債を差し引くと、約960万円になります。
この記事では、私の実際の査定結果を公開するとともに、次の疑問に答えます。
- 低圧太陽光はいくらで売れるのか
- なぜ建設費を上回る査定になったのか
- 査定額からローンを返すといくら残るのか
- 査定額が高ければ売却した方がよいのか
- 査定前に何を準備すればよいのか
低圧太陽光発電所の売却を検討している方は、判断材料の一つとして参考にしてください。
※この記事は、私が所有する発電所の査定事例です。設備条件、FIT単価、土地、地域、査定時期などによって査定結果は異なります。
結論:建設費1,720万円の低圧太陽光に1,800万円の査定がついた
今回査定を依頼したのは、私が所有する2基目の低圧太陽光発電所です。
主な設備情報は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 稼働開始 | 2021年 |
| 発電区分 | 低圧太陽光発電所 |
| パネル容量 | 約97.6kW |
| パワーコンディショナー容量 | 50kW未満 |
| 太陽光パネル | カナディアンソーラー |
| パワーコンディショナー | オムロン |
| 2025年の年間発電量 | 104,747kWh |
| 土地 | 自己所有 |
| 建設費用 | 1,720万円 |
| 売却査定額 | 1,800万円 |
| ローン残債 | 約840万円 |
パネル容量は約97.6kWですが、パワーコンディショナーの出力が50kW未満であるため、低圧太陽光発電所に該当します。
いわゆる過積載の設備です。
建設費用と査定額を単純に比較すると、次のようになります。
- 建設費用:1,720万円
- 売却査定額:1,800万円
- 差額:80万円
中古設備であるにもかかわらず、建設費用を上回る査定額が提示されたことには、正直なところ驚きました。
ただし、この結果だけを見て「80万円もうかった」と考えることはできません。
太陽光発電設備は毎年減価償却しています。また、売却時にはローン返済、手数料、税金なども発生します。
実際の売却判断では、査定額よりも「最終的にいくら手元に残るのか」が重要です。
査定額1,800万円からローンを返すと約960万円
今回の査定結果で、読者の方が最も気になるのは、次の点ではないでしょうか。
「査定額が1,800万円なら、実際にいくら残るのか」
私の場合、査定時点のローン残債は約840万円です。
単純に差し引くと、次の金額になります。
1,800万円-840万円=約960万円
つまり、査定額どおりに売却できた場合、ローンを返済した後に約960万円が残る計算です。
しかし、約960万円がそのまま手元に入るわけではありません。
実際には、次のような費用を考慮する必要があります。
- ローンの繰上返済手数料
- 売却に伴う税金
- 土地を含めて売却する場合の関連費用
売却後の手取り額は、次の考え方で計算します。
売却後の手取り額=売却価格-ローン残債-売却諸費用-税金
したがって、私のケースでは、約960万円から諸費用と税金を差し引いた金額が最終的な手取りになります。
正確な金額を知るには、査定会社だけでなく、税理士にも確認する必要があります。
なぜ中古の低圧太陽光に高額査定がついたのか
なぜ、稼働開始から数年が経過した発電所に、建設費を上回る査定額がついたのでしょうか。
査定会社から詳細な計算根拠がすべて示されたわけではありませんが、複数の要因が影響したと考えています。
新しい野立て太陽光を建設するハードルが上がっている
近年、野立て太陽光発電所を新しく建設するハードルは、以前より高くなっています。
太陽光発電そのものが否定されているわけではありません。
一方で、森林伐採、土砂災害、排水、景観、地域住民とのトラブルなどが問題になるケースもあり、自治体による条例や事前協議、住民説明などを求められる地域が増えています。
新しく野立て太陽光を建設する場合は、設備を購入するだけでは済みません。
- 土地の法令確認
- 自治体条例の確認
- 農地転用や山林開発
- 近隣住民への説明
- 電力会社との系統接続
- 将来の撤去や廃棄への対応
こうした課題をクリアするのが難しいことにあります。
すでに稼働している発電所の価値が相対的に見直されている可能性があります。
稼働済み発電所はすぐに収益を確認できる
新規の発電所は、完成して売電を開始するまで収益が発生しません。
計画どおりに工事が進まなかったり、系統連系が遅れたりするリスクもあります。
一方、中古の稼働済み発電所には、次のメリットがあります。
- すでにFIT認定を取得している
- 電力系統への連系が完了している
- 実際の売電実績を確認できる
- 年間発電量を実測値で判断できる
- 現地で設備状態を確認できる
- 名義変更後、売電収入を得られる
- 新規建設に伴う許認可リスクが少ない
投資家から見れば、発電シミュレーションではなく、実際の発電実績を見て収益性を判断できることは大きな安心材料です。
年間発電量を実績で示せる
今回査定した発電所の2025年の年間発電量は、104,747kWhでした。
査定では、設備容量だけでなく、実際にどれだけ発電しているかが重要です。
過去の売電明細や遠隔監視データがあれば、買主は次の点を確認できます。
- 発電量が安定しているか
- シミュレーションとの大きな差がないか
- 年々発電量が低下していないか
- 故障や停止が発生していないか
- 出力制御の影響がどの程度あるか
主要メーカーの設備を使用している
今回の設備では、太陽光パネルにカナディアンソーラー、パワーコンディショナーにオムロンを使用しています。
査定では、メーカー名だけで金額が決まるわけではありません。
しかし、買主にとっては、設備の信頼性、交換部品、故障時の対応、保証状況なども重要です。
本当に査定額は高騰しているのか
新しい野立て太陽光の開発が難しくなっていることから、条件のよい中古発電所の価値が見直されている可能性はあります。
ただし、すべての低圧太陽光発電所の査定額が、一律に高騰しているわけではありません。
太陽光発電所の価格は、次の条件によって大きく変わります。
- FITの売電単価
- FITの残り期間
- 年間売電収入
- 発電実績
- 出力制御の状況
- 設備の経過年数
- 土地が所有地か借地か
- 接道や管理のしやすさ
- 災害リスク
- 地域や電力会社の管轄
市場価格を正確に知るには、1社だけではなく、複数社へ査定を依頼することが重要です。
査定額1,800万円なら売却すべきか
高額査定がつくと、「今のうちに売った方が得なのではないか」と考えてしまうものです。
私も1,800万円という査定額を見て、少し売却を検討しました。
査定額からローン残債を差し引くと約960万円です。
まとまった資金を確保できる点は、大きな魅力です。
売却すれば、次のメリットがあります。
- ローン残債約840万円を完済できる
- 諸費用・税金控除前で約960万円残る
- 草刈りや点検の負担がなくなる
- 今後の設備故障のリスクを手放せる
- 災害や盗難の心配がなくなる
- 将来の設備撤去を考えなくてよい
一方で、売却すれば、今後の売電収入はなくなります。
保有を続ける場合には、次のメリットがあります。
- FIT期間中の売電収入を受け取れる
- ローン残債がさらに減る
- ローン完済後の手残りが増える
- FIT終了後の活用方法を検討できる
- 将来、蓄電池などを組み合わせる選択肢が残る
私がすぐに売却を決めなかったのは、この将来の売電収入を手放したくなかったからです。
建設費より高く売れるからといって、売却が必ず得になるわけではありません。
売却と保有継続を比較する方法
売却するか迷っている場合は、感覚だけで決めず、数字を並べて比較することが大切です。
売却後の手取り額を計算する
最初に、次の金額を確認します。
- 査定額
- ローン残債
- 繰上返済手数料
- 仲介手数料
- 登記費用
- 名義変更費用
- 税金
- その他の諸費用
私の場合、査定額からローン残債を差し引いた段階では約960万円です。
ここから諸費用と税金を引いた金額が、最終的な手取り額になります。
FIT終了までの手残りを計算する
次に、発電所を保有した場合に、FIT終了までどの程度の利益が残るかを計算します。
年間売電収入だけを見るのではなく、次の費用を差し引かなければなりません。
- ローン返済
- 固定資産税
- 保険料
- 草刈り費用
- 点検費用
- 遠隔監視費用
- 修理費
- パワーコンディショナー交換費用
- 税金
- 税理士費用など
比較すべきなのは、売電収入ではなく、すべての支出を引いた後の手残りです。
将来の修繕リスクを考える
太陽光発電所を保有し続ける場合は、将来の故障や修繕も考える必要があります。
特に、パワーコンディショナーは発電所の運用期間中に交換が必要になる可能性が高いです。
そのほかにも、次のリスクがあります。
- パネルの破損
- 防草シートの劣化、張り替え
- ケーブルの損傷
- 遠隔監視装置の故障
- 豪雨や積雪による被害
- 出力制御の増加
- 盗難やいたずら
- FIT終了後の撤去費用
将来の修繕費を全く考えずに、売電収入だけで保有継続を判断するのは危険です。
資金の使い道を考える
売却によってまとまった資金が残る場合、そのお金を何に使うかも重要です。
例えば、次のような選択肢があります。
- 生活防衛資金として確保する
- NISAなどで長期運用する
- 他の借入金を返済する
- 新しい事業へ投資する
- 不動産など別の資産へ組み替える
売却後の資金に明確な使い道があるなら、売却のメリットは大きくなります。
反対に、売却後の資金を預金したままにするのであれば、売電収入を得られる発電所を保有し続ける選択肢もあります。
査定を依頼する前に準備したい資料
太陽光発電所の査定をスムーズに進めるには、資料を整理しておくことが大切です。
売電関係
- 売電単価
- 売電開始年月
- 過去1年から3年分の売電金額
- 年間発電量
設備関係
- 太陽光パネルのメーカーと型式
- パネル容量
- パワーコンディショナーのメーカーと型式
- パワーコンディショナー容量
- 遠隔監視有無
資料が揃っていれば、査定会社も発電所の収益性とリスクを判断しやすくなります。
査定会社へ確認したい質問
査定額を提示されたら、金額だけを見て判断してはいけません。
最低限、次の点を確認しましょう。
- 査定額は概算価格か確定価格か
- 現地調査後に減額される可能性はあるか
- 仲介手数料はいくらか
- その他の費用は発生するか
- 売却完了までどの程度かかるか
- 契約後に売主が負う責任はどこまでか
- 売却後に不具合が見つかった場合はどうなるか
口頭説明だけでなく、メールや書面で回答を残しておくことをおすすめします。
1社の査定だけで決めない
太陽光発電所の査定額は、会社によって異なる場合があります。
最初に高い金額を提示し、現地調査後に減額される可能性もあります。
反対に、買主候補や販売ルートによって、より高い価格を提示できる会社もあります。
そのため、同じ資料を使って2社から3社程度へ査定を依頼し、次の条件を比較するとよいでしょう。
- 査定額
- 手数料
- 売却までの期間
- 現地調査の有無
- 減額条件
- 契約後の責任範囲
査定額が最も高い会社が、必ずしも最もよい会社とは限りません。
最終的な手取り額と契約条件を見て判断することが重要です。
低圧太陽光の売却で後悔しないためのチェックリスト
売却査定を依頼する前後に、次の項目を確認しておきましょう。
- ローン残債を確認した
- FITの売電単価を確認した
- FITの残存期間を確認した
- 過去の売電明細を準備した
- 年間発電量を整理した
- 複数の会社へ査定を依頼した
- 査定額が概算か確定か確認した
- 仲介手数料を確認した
- 売却時の税金を確認した
- 売却後の手取り額を計算した
- 保有を続けた場合の手残りを計算した
- 将来の修繕費を見込んだ
- FIT終了後の土地利用を考えた
- 契約書の売主責任を確認した
このチェックリストを一つずつ確認することで、査定額だけに流されず、冷静に売却を判断できます。
私が査定を受けて分かった3つのこと
売却予定がなくても査定を受ける意味はある
査定を受けたからといって、必ず売却する必要はありません。
現在の発電所がいくらで評価されるのか分かれば、今後の資産運用を考える材料になります。
- 売却する
- 保有を続ける
- ローンを繰上返済する
- 相続方法を考える
- 別の資産へ組み替える
こうした選択肢を比較しやすくなります。
査定額ではなく手取り額で判断する
1,800万円という査定額は魅力的です。
しかし、ローン残債、手数料、税金を差し引けば、実際の手取り額は少なくなります。
売却の判断で比較すべきなのは、次の2つです。
- 売却後に最終的に残る金額
- 保有を続けた場合に将来得られる手残り
この比較をしなければ、本当に売却した方がよいのか判断できません。
将来的にはFIPへの移行や蓄電池導入という選択肢もある
現時点ではFIT制度による売電を続けていますが、今後はFIP(フィード・イン・プレミアム)制度への移行や、蓄電池の導入という選択肢も視野に入ってきます。
FIPは、市場価格に一定のプレミアムを上乗せして売電する制度で、FITよりも市場動向に応じた収益設計が求められます。また、蓄電池を導入すれば、出力制御の影響を抑えたり、売電のタイミングを調整したりできる可能性があります。
さらに、敷地内に空きスペースがある場合は、その土地を低圧系統用蓄電池の設置場所として活用するという選択肢もあります。系統用蓄電池は、電力の需給バランスを調整する役割を担う設備で、太陽光発電とは別の収益源になり得ます。すでに電力系統への接続や土地の権利関係が整っている土地であれば、新たに用地を探すよりもスムーズに導入を検討できる可能性があります。
こうした制度や技術の変化に対応できる余地を残せるのは、発電所を保有し続けているからこそです。売却してしまえば、この先の選択肢そのものを手放すことになります。
まとめ:驚きの高額査定でも、すぐに売却する必要はない
私が2021年に建設した低圧太陽光発電所を売却査定した結果、提示された金額は1,800万円でした。
建設費用は1,720万円です。
稼働開始から数年が経過しているにもかかわらず、建設費用を80万円上回る査定結果となりました。
また、査定時点のローン残債は約840万円です。
- 建設費用:1,720万円
- 売却査定額:1,800万円
- ローン残債:約840万円
- ローン返済後の残額:約960万円
ただし、約960万円から手数料や税金などを差し引く必要があります。
新しい野立て太陽光の建設に対する規制や地域調整が厳しくなるなか、すでに稼働し、売電実績が確認できる中古発電所の価値が見直されている可能性があります。
一方で、すべての発電所が高く売れるわけではありません。
査定額は、FIT単価、残存期間、発電実績、土地、設備状態などによって大きく変わります。
売却を考えている方は、査定額だけを見て決めるのではなく、次の順番で確認してください。
- 複数社へ査定を依頼する
- ローン残債と売却費用を確認する
- 売却後の手取り額を計算する
- 保有を続けた場合の手残りを計算する
- 将来の修繕リスクや管理負担を考える
- 売却資金の使い道を決める
私自身も、1,800万円という高額査定を受けましたが、すぐに売却するとは決めませんでした。
高く売れる可能性と、保有を続けた場合の将来収入。
その両方を数字で比較してから決めることが、後悔しない売却判断につながります。

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