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部下に仕事を任せても、私の仕事は減らなかった

製造業の管理職として改善を続け、56歳で気づいた働き方の癖

朝5時ごろには会社に着いていました。

まだ工場が本格的に動き出す前の時間です。

事務所でメールを確認し、その日の会議や現場対応を整理する。前日に気になっていた安全面のこと、設備の不具合、関係部署に確認しなければならないことも頭の中で並べ直します。

始業前のこの時間がないと、一日が回らないような気がしていました。

夜は19時、遅い日には21時ごろまで残ることもありました。

日中は、予定していた仕事だけでは終わりません。

現場からの相談。
安全面の確認。
設備や建物の不具合。
急な資料作成。
他部署との調整。
部下からの報告や判断の相談。

総務の仕事は、机の上だけで完結しません。

現場、安全、防火、環境、設備、建物、社内ルール、教育、行政対応など、工場全体を見ていると、毎日のように予定外のことが起こります。

土曜日も出社することが多く、休めるのは日曜日くらいでした。

それでも当時の私は、「忙しすぎる」とはあまり思っていませんでした。

工場を止めないために必要なこと。
現場が安全に働くために必要なこと。
会社を少しでも良くするために必要なこと。

そう考えていたからです。

目次

私は、頼まれた仕事より「気づいた仕事」を増やしていた

製造業の総務や管理部門には、誰かから明確に依頼される仕事があります。

安全会議の準備。
社内通知の作成。
法令対応。
防火管理。
設備点検。
環境関係の記録。
行政や業者との調整。

しかし、実際には、依頼されない仕事の方が多いと感じていました。

工場内を歩けば、気になるところが見つかります。

「この場所は、雨が降ったときに滑りやすくならないか」

「この点検記録は、紙に書いて転記するより簡単な方法があるのではないか」

「この照明は、使い方を見直せば電気代を抑えられるのではないか」

「この建物の不具合は、今のうちに対応しないと後で大きな修理になるのではないか」

「この仕事は、担当者しか分からない状態になっていないか」

安全、コスト、作業負担、設備保全。

少し注意して見れば、改善できそうなことはいくつも見つかります。

そして私は、一度気づくとそのままにしておくことができませんでした。

誰かに頼まれたわけではないのに、現場を確認する。

関係者に話を聞く。

数字を調べる。

資料をつくる。

改善案を考える。

気づけば、自分で新しい仕事をつくっていました。

部下を育てることは、管理職として大切にしてきた

私は、何でも自分で抱え込むだけの管理職ではなかったと思います。

部下には、できるだけ仕事を任せるようにしてきました。

最初から丸投げするのではなく、仕事の目的を説明する。

過去の資料を見せる。

必要な判断基準を伝える。

途中で確認しながら、少しずつ任せる範囲を広げる。

安全関係の資料づくり、点検結果の整理、社内連絡、現場との調整なども、少しずつ部下が対応できるようになっていきました。

部下が、自分で考えて判断し、次の人に教えられるようになる。

それは管理職として、とても嬉しいことでした。

自分がいなくても、仕事が回るようになる。

担当者ごとの経験や知識が、組織に残っていく。

本来であれば、それは管理職として一つの成果だったと思います。

それでも、自分の仕事を減らすことはできなかった

ただ、部下ができることを増やしても、私の仕事は減りませんでした。

減らなかったというより、減らさなかったのだと思います。

部下に任せられる仕事が一つ増える。

すると私は、空いた時間に新しい改善テーマを入れていました。

照明の使い方を見直して、電力使用量を減らせないか。

紙で行っていた点検や記録を、スマートフォン入力やフォームに変えられないか。

申請や確認の流れを整理し、抜け漏れを防げないか。

建物や設備の小さな異常を、早めに把握する仕組みをつくれないか。

安全関係の資料を、担当者が変わっても使える形にできないか。

例えば、照明のLED化や不要な点灯時間の見直しは、省エネだけが目的ではありません。

現場の稼働状況を見ながら、どこを消しても安全上の問題がないかを考える必要があります。

単純に「消せばよい」という話ではないのです。

現場の作業内容、通路の明るさ、夜間作業の有無、保全作業の時間帯なども確認しなければなりません。

紙の記録をデジタル化するときも同じです。

事務所にいる人にとって便利な仕組みでも、現場の人が使いにくければ続きません。

入力項目を増やしすぎない。
スマートフォンで迷わず入力できるようにする。
必要な情報だけを残す。
集計する側の手間も減らす。

現場の負担と管理側の都合の両方を考える必要があります。

改善は、思いつくだけでは進みません。

現場を見て、関係者の話を聞き、実際に使える形に整え、続く仕組みにする。

その工程を知っているからこそ、私は改善を簡単に終わらせられませんでした。

日中は現場対応、夜は改善資料

日中は、目の前の対応に追われます。

現場で気になることがあれば確認に行く。

設備の不具合があれば、状況を見て業者と連絡を取る。

安全上の問題があれば、応急対応と恒久対策を分けて考える。

会議があれば資料を準備し、関係部署と調整する。

部下から相談があれば、判断の基準を一緒に考える。

気がつけば夕方です。

そして、日中にできなかった改善資料の作成や、データ整理、翌日の準備は、夕方以降に回ります。

誰かに残業を命じられたわけではありません。

けれど、自分の中では「やらなければならない仕事」になっている。

だから残る。

だから家に帰っても考える。

だから休日でも、現場や資料のことが頭に浮かぶ。

私は仕事に追われていた面もあります。

しかし同時に、良くしようとする気持ちが強すぎて、自分で仕事を抱え込み続けていたのだと思います。

改善には終わりがない。だからこそ、自分で線を引く必要がある

工場を見れば、改善点は必ず見つかります。

安全を高めようと思えば、さらに確認したいことが出てくる。

コストを下げようと思えば、見直せる設備や運用が見えてくる。

業務を簡単にしようと思えば、次は別の紙や別の手順が気になってくる。

改善には終わりがありません。

だからこそ、改善できることをすべて自分で抱える働き方には、限界があります。

以前の私は、「気づいたのに何もしない」ことに抵抗がありました。

自分が動けば、現場が少し良くなるかもしれない。

自分が整理すれば、誰かの手間が減るかもしれない。

自分が先に対応すれば、大きな問題を防げるかもしれない。

その考え方は、管理職として間違っていたとは思いません。

ただ、仕事を良くすることと、自分の時間を削り続けることは、本来は別の話です。

頑張れていることと、余裕があることも同じではありません。

これからは、自分の時間も改善対象にしたい

私はこれまで、職場のさまざまなものを改善してきました。

無駄な作業を減らす。
経費を抑える。
安全性を高める。
紙の仕事を整理する。
担当者しか分からない仕事を減らす。
設備や建物の不具合を早めに見つける。

これからは、その視点を自分の暮らしにも向けたいと思っています。

新しいことを始める前に、減らせることはないか。

自分しかできないと思い込んでいる仕事はないか。

本当に今すぐ対応する必要があるのか。

効果だけでなく、自分が使う時間まで考えられているか。

会社では、改善した結果を数字や現場の変化で確認してきました。

電力使用量がどう変わったか。
入力時間がどれだけ減ったか。
安全上のリスクがどう下がったか。
現場が使いやすくなったか。

これからは、自分の生活についても同じように考えたいと思っています。

早朝から夜まで仕事のことを考えずに済む日があるか。

家でゆっくり過ごす時間を確保できているか。

新しい挑戦に使う時間が取れているか。

何もしない時間を、罪悪感なく持てているか。

それもまた、暮らしを良くするための改善です。

56歳から、改善の力を自分の人生にも使う

56歳になって、これまでの働き方をすべて否定したいわけではありません。

早く動くこと。
先回りして準備すること。
安全や設備の小さな異常を見逃さないこと。
現場の困りごとを放っておけないこと。

それらは、長い仕事人生の中で身につけてきた自分の強みでもあります。

ただ、その強みを会社のためだけに使い続けるのではなく、これからは自分の人生のためにも使いたい。

仕事を増やすためではなく、生活に余白をつくるために。

誰かが働きやすくなる仕組みをつくってきたように、自分自身が無理なく過ごせる仕組みもつくっていく。

56歳からの再設計は、大きな決断だけではありません。

まずは、自分がずっと仕事を優先してきたことを認める。

そして、職場で続けてきた改善を、自分の時間と暮らしにも少しずつ使っていく。

私は今、その改善を始めようとしています。

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